犬王メモ①QUEENと『腕塚』
※パンフが売り切れていて未読なので手に入ったら適宜修正するかもしれない。
※原作はKindleでざっと流し読みしてそれぞれの歌詞もApple Musicで確認済。
犬王の劇中歌がQUEENっぽいという感想を結構目にするけど、個人的には明らかに意識してオマージュしているだろうなと思うしむしろQUEENの曲の要素から拝借しているメッセージを拾いあげることでより各演目の理解が進むのではないかと思った。以下そのメモ。
◾️『腕塚』とQUEENについて
↓動画はこちら
https://m.youtube.com/watch?v=b3tP4huFvlE
元ネタはQUEENの"another one bites the dust"(邦題:地獄に道連れ)。
↓動画はこちら
https://m.youtube.com/watch?v=rY0WxgSXdEE
他作品だがジョジョ4部でもラスボスの吉良吉影のスタンド・キラークイーンの能力として『バイツァ・ダスト(負けて死ね)』が出てくる。
吉良吉影といえば女性の腕を手首を偏愛するがあまり、殺して「手を切り取り」その手を恋人にして連れ回すというちょっと変わった趣味で有名だが、これも『腕塚』の「腕を切られ〜」に通づるものがあり大変趣がある。作詞作曲した女王蜂アヴちゃんが意識していたのかは不明。
◾️『腕塚』の内容
・薩摩守として知られる平忠度(ただのり)が一の谷の合戦で片腕を失ったが、その最期の時、忠度を守っていた100人ほどの護衛たちが、敵が現れるや我先に逃亡したと一般には伝えられている。
・しかし実際には、護衛は主人である忠度をおいて逃げたのではなく、忠度を一の谷の陣から退くのを助けていた。だが、その退却の道中で忠度は敵の岡部忠純に平家側の重鎮であることを見抜かれて、その腕と首を切られ殺されてしまう。
・主を失った護衛たちは海に逃げようとするがその数(数百人)に対し船の数が圧倒的に足りない。そこで「身分が高い方々だけ乗り、それ以外は乗せるな」と命令が下る(「身分だけが正しさ」)。
・その命令が下っても雑兵たちは生き残りたいので船にしがみついたが、このままでは船は沈んでしまうのでみんな「腕を切られた」。
・生き残った忠度の家来が、主人の腕は見つからず拾えなかったが代わりに散った雑兵の数百本の腕を拾って埋める。そこが腕塚となった。
◾️『腕塚』の所感
・先述した通り、元ネタの"another one bites the dust"は『負けて死ぬ』。映画の特典の幕間では負けるとはいなくなること、すなわち歴史から抹消されることであるというのが強調されている。『腕塚』では負けたがために史実では主人を捨て逃げたということになっている護衛達の名誉を回復すべく、本当は違うんだぜ!というのを唄う内容となっている。これは犬王の物語自体が、史実では全く語られてないけど本当はこうだったんぜ!というのと入れ子構造になっていて、脚本が、原作がうますぎる。
この犬王の話は全編を通して、負けて歴史から抹消された者たちの名誉を語ることによって回復する物語なのだよなぁ。ワンピースのDr.ヒルルクの台詞に似たようなのがあったなあと思い出す。
・腕塚神社は明石にあるが歌詞に出てくる柿の木はないらしい。こっちの元ネタはおそらく平重衡首洗池・不成柿だと思う。原作から出てくる要素なので映画で後から付け足されたわけではない。