犬王メモ③QUEENと『竜中将』
※パンフが売り切れていて未読なので手に入ったら適宜修正するかもしれない。
※原作はKindleでざっと流し読みしてそれぞれの歌詞もApple Musicで確認済。
↓前回
https://sekichip.hatenablog.com/entry/2022/06/17/210403
犬王の最後の演目『竜の中将』
竜中将だけYouTubeに紹介映像がないので曲や歌詞はApple Music等で確認。
◾️『竜中将』とQUEENについて
元ネタは"Bohemian Rhapsody"
2018年にフレディ・マーキュリーの一生を描いた同名の映画でも話題になった。犬王と友有がロックでのしあがっていくこの物語自体この話が一要素としてベースにある。発表当時のシングルがだいたい3分だったのに対し" Bohemian Rhapsody"はそれをはるかにこえた6分という異例の長さでレコード会社の上層部と揉めるシーンが映画の中でもあった。
犬王でも竜中将のシーンが長すぎるという意見がTwitter等で多々見られたが曲の長さは13分16秒である。こういう反応を受けるのも実は意図的に長くしていたとしたら面白い。
また、"Bohemian Rhapsody"の歌詞中、「Mama, just killed a man,(ママ、僕はたった今、人を殺してきたんだ)」の解釈の中の有名な一説として「フレディがバイであることをカミングアウトしている、つまりここでは(バイではないいままでの偽りの)自分自身を殺しているのだ」というものがある。そして犬王はこの後、足利義満に屈して、いままで自分達が歌ってきた平家の物語を封印することになる。竜中将時点ではまだその動きはないのではあるが、竜中将の歌が犬王が自分自身を殺すことの伏線となっている。
バレエ要素があったり途中でヨーヨーヨヨーと歌い出したりするのは初見だとびっくりするが、これもロックにクラシック要素を持ち込んだ"Bohemian Rhapsody"の手法の借用。
◾️『竜中将』の内容・所感
湯浅監督のTwitterより、『竜中将』の内容は平家一門を弔うお経「竜畜経」そのものである。平家物語で中将いえば平重衡だが彼は壇ノ浦で入水したのではなく鎌倉で捕虜となり処刑されたので、平家一門を指す概念かもしくは一人だけ一門と共に逝けなかった重衡の無念を指すのか材料が足りずよくわからない。
また「この都に流行るもの〜」は後醍醐天皇の建武の新政を揶揄する内容だが平家の時代とも義満の時代とも少しずれるのも気になる。谷一の兄者が友魚に声を潜めて「足利の支配が及んでいない証拠じゃ」と行っているのを踏まえて、時代が変わっても権力というのは変わらないこと、足利幕府の体制を揶揄しているとも取れる。谷一達は心の中ではそう思っては表面上は足利に従っていたが、それに従わない友有とそれの末路(平家と同じ道を辿る)を暗喩しているともいえる。